アメジローの岩波新書の書評(集成)

アメリカン・ショートヘアのアメジローです。岩波新書の書評が中心の教養読書ブログです。

岩波新書の書評(130)岩波書店「図書 はじめての新書」

岩波書店が出している月刊誌「図書」の「岩波新書創刊80年記念」に当たる臨時増刊「はじめての新書」(2018年)を先日、入手しつらつらと読んでいた。

2018年で岩波新書は創刊80周年を迎える。岩波新書は1938年に日本で生まれた「はじめての新書」である。サイズはタテ17・3センチ×ヨコ10・7センチ(黄金比)、重さは150─200グラム、文字数は10万字。新書という書籍の真骨頂は、このコンパクトさにある。コンパクトな新書一冊の中にそれぞれの広大な宇宙がある。「図書」臨時増刊では、特集「はじめての新書」として書籍に関わる134人(作家、評論家、書評家、大学教授、ジャーナリスト、編集者、書店員ら)にアンケートを行い、初めて読んだ新書、愛読の新書、心に残る新書、未読な読者にお薦めの新書を推薦文とともに数冊、リスト形式にて各人各様に挙げている。

錚々(そうそう)たる顔ぶれの現代日本の文化人、知識人、読書通らが推薦する既刊の新書であるから、おそらくは薦められるどの新書を読んでも駄作の失敗作は皆無で、それぞれが良書で名著と評される名作な新書であるに違いない。こうした推薦書目リスト作成の試みは、「はじめての新書」としてこれから新書の何を読もうか迷っている読者へ向けて読書案内の書籍ガイドとして大いに役立つはずだ。

私のことに引き付けて言えば、「はじめての新書」特集にて推薦された名作な岩波新書をだいたい私は、ほとんど読んでいる。誠に手前味噌(てまえみそ)で申し訳ないが、自身がこれまで読んできた岩波新書を振り返ってみて、自分としては「新書読書の選択センスが、そこまで特集にて挙げられている推薦新書群と外れていない。俺もなかなか筋(すじ)がいいじゃないか」という気持ちも正直ある(笑)。もちろん、それは「自惚(うぬぼ)れに過ぎない」と笑ってもらって結構だ。そして、それら新書に関し当ブログ「岩波新書の書評」にて取り上げた新書も多い。また未読のものや、以前に読んだが内容を忘れていてこの機会に新たに再読してみたい、そうして書評を書いてみたいと思わせる過去の岩波新書も少なからずあった。

岩波新書編集部は、節目の周年で毎回定期的に推薦書目のアンケート企画をやっている。今回の岩波新書創刊80年記念「はじめての新書」にて最も多くの人から定番で推薦された一番(ベスト)な新書は、同票で二冊(どちらとも134人中12人が推薦)、丸山眞男「日本の思想」(1961年)とカー「歴史とは何か」(1962年)であった。この二冊が圧倒的であり独走である。いずれも昔から有名で定番名著な岩波新書だ。そして、この二冊にかなりの後塵(こうじん)を拝して次点なのが、鶴見良行「バナナと日本人」(1982年)であり、さらにその後に吉田洋一「零の発見」(1939年)、石母田正「平家物語」(1957年)、池田潔「自由と規律」(1963年)、宇沢弘文「自動車の社会的費用」(1974年)が同列に並んで続く。近年の新書では、堤未果「ルポ・貧困大国アメリカ」(2008年)と坂井豊貴「多数決を疑う」(2015年)が突出した人気である。この二冊は最近の岩波新書として押さえておかなければならない、読み逃してはいけないと私には強く思えた。

ここで「はじめての新書」として、よく推薦されている既刊の岩波新書で必読の良書・名著であろうと思われる推薦書目をリストアップしてみる。リストアップして載せる基準は、一人のみが挙げる「ベストな」新書だとその人の趣味や嗜好の偏向が入っているかもしないので、最低でも二人以上が重複して「これは読まれるべき」と推(お)した岩波新書に限り記載する。

以下「はじめての新書」に順位はなく、刊行の古い順である。

斎藤茂吉「万葉秀歌」(1938年)、吉田洋一「零の発見」(1939年)、鈴木大拙「禅と日本文化」(1940年)、遠山啓「無限と連続」(1952年)、吉川幸次郎「新唐詩選」(1952年)、石母田正「平家物語」(1957年)、岡義武「山県有朋」(1958年)、中谷宇吉郎「科学の方法」(1958年)、キング「自由への大いなる歩み」(1959年)、清水幾太郎「論文の書き方」(1959年)、遠山茂樹「昭和史・新版」(1959年)

丸山眞男「日本の思想」(1961年)、カー「歴史とは何か」(1962年)、池田潔「自由と規律」(1963年)、大江健三郎「ヒロシマ・ノート」(1965年)、西郷信綱「日本文学の古典」(1966年)、加藤周一「羊の歌」(1968年)、梅棹忠夫「知的生産の技術」(1969年)

市井三郎「歴史の進歩とはなにか」(1971年)、阿波根昌鴻「米軍と農民」(1973年)、鈴木孝夫「ことばと文化」(1973年)、宇沢弘文「自動車の社会的費用」(1974年)、森嶋通夫「イギリスと日本」(1977年)、朝永振一郎「物理学とは何だろうか」(1979年)

田中克彦「ことばと国家」(1981年)、鶴見良行「バナナと日本人」(1982年)、廣松渉「新哲学入門」(1988年)、村井吉敬「エビと日本人」(1988年)、川北稔「砂糖の世界史」(1996年)、遅塚忠躬「フランス革命」(1997年)

見田宗介「社会学入門」(2006年)、堤未果「ルポ・貧困大国アメリカ」(2008年)、成毛眞「面白い本」(2013年)、坂井豊貴「多数決を疑う」(2015年)、斎藤美奈子「文庫解説ワンダーランド」(2017年)