アメジローの岩波新書の書評(集成)

アメリカン・ショートヘアのアメジローです。岩波新書の書評が中心の教養読書ブログです。

岩波新書の書評(144)ピーターセン「日本人の英語」

岩波新書の赤、ピーターセン「日本人の英語」(1988年)は、私にとっては大変に懐かしい新書だ。

本書が出された1980年代、私は高校生で大学受験英語を学んでいて、最近では英語の大学受験参考書も理論的に掘り下げて親切に教えてくれる良書が多く出されているが、しかし当時はまだ英文法にて「なぜ、そうなるのか」英語の本質を押さえ理論的に詳しく説明してくれる英語参考書の書籍があまりなかった。例えば、英文法での「現在完了形と過去形の違い」について、「現在完了形には完了・経験・継続の用法があって一見、時制は過去に属しているように思われるのに、なぜ『現在』完了なのか!?」しっかりと解説してくれる英語教師や英語参考書が(少なくとも私の周りには)当時、なかった。1980年代の日本の英語教育といえば「とにかく覚えろ」の根性暗記主義の高校での大学受験英語か、「とりあえず慣れよ」の反復習慣主義の街の英会話スクールのカルチャー英語がまだ主流であった。

岩波新書のピーターセン「日本人の英語」は初版が出た当初からメディアにて推薦本として頻繁に取り上げられ、当時から評判がよかった。本新書は、かなり好評で多くの人に読まれたに違いない。ピーターセン「日本人の英語」は後に同じ岩波新書から「続・日本人の英語」(1990年)と「実践・日本人の英語」(2013年)の続編が出ている。私は当時、岩波新書のピーターセン「日本人の英語」と語学春秋社の山口俊治「英文法講義の実況中継」(1985年)を読んで「なるほど、前よりは英語の本質が深く理解できるようになった」。そうした心持ちになり、非常にありがたかった思い出がある。

ピーターセン「日本人の英語」は、いつもの岩波新書とは少しだけ体裁が異なり、本文は横書きの書籍は左綴(と)じである(通常ほとんどの岩波新書は本文が縦書きの書籍は右綴じだ)。そうした新書の形態が書籍を実際に手にして読んで、まず新鮮に感じる。本書の内容は「日本人にとっての英語の問題点」であり、だから「日本人の英語」のタイトルなのだが、その主な解説項目といえば、

「1・冠詞と数、a、the、複数、単数などの意識の問題、2・前置詞句、to、at、in、on、about、aroundなど、3・文法の時制、4・関係代名詞の用法、5・受動態、論文に目立つ受動態の使いすぎの問題、6・論理関係を表す言葉、因果関係を表す言葉から、もっと微妙な関係を表す言葉まで」

以上の各トピックよりなる。前述の「現在完了形には完了・経験・継続の用法があって一見、時制は過去に属しているように思われるのに、なぜ『現在』完了なのか」の問題や「不定冠詞のaをつけるか否か、いつも迷ってしまう」「othersとthe・otherの意味上の区別がつかない」「日本語で発想するため、ライティングの際に日本語表現に多い受動態をつい使いすぎてしまう」の英語の悩みを持つ人に本書は効果覿面(こうかてきめん)といえる。

最後に、本書の表紙カバー裏解説文を載せておく。

「『冷凍庫に入れる』はput・it・in・the・freezerなのに、『電子レンジに入れる』だと put・it・in・my・microwave・ovenとなる。どういう論理や感覚がこの英語表現を支えているのか。著者が出会ってきた日本人の英語の問題点を糸口に、従来の文法理解から脱落しがちなポイントをユーモア溢(あふ)れる例文で示しつつ、英語的発想の世界へ読者を誘う」

(※「冷凍庫に入れる」はthe・freezerなのに「電子レンジに入れる」だとmy・microwave・ovenとなるのは、これは純然たる意識の問題である。冷凍庫はどの家庭にでもあると意識されるが、電子レンジはまだそこまで普及していない。どの家にも当然、電子レンジがあるとは意識されないから、冷凍庫は一般凡例の意識でtheだが、電子レンジは特別な持ち物のニュアンスが強調されてmyの所有関係になる。詳しくは本書44・45ページを参照)