アメジローの岩波新書の書評(集成)

アメリカン・ショートヘアのアメジローです。岩波新書の書評が中心の教養読書ブログです。

岩波新書の書評(346)永原慶二「源頼朝」

源頼朝といえば、言わずと知れた鎌倉幕府を開いた初代将軍であり、岩波新書の青、永原慶二「源頼朝」(1958年)は頼朝の出生から死去までの生涯を時系列で一気に書き抜いた評伝である。あらためて源頼朝の概要を押さえておくと、 「源頼朝(1147─99年)。義…

このブログ全体のための最初のノート

今回から新しく始める「アメジローの岩波新書の書評」(※これまでに書き溜めてきた書評記事の厳選集成であり、以前に別の場所でやっていたブログをそのまま移動しているため全く同じ文章があります。しかし、それは赤の他人の第三者によるコピーとか盗作・剽…

私に命令をするな←(笑)

いちばんはじめの書評をめぐるコラム

私は若い頃から「図書新聞」をよく購読し、昔から書評やブックレビューの読みものを楽しんで読んでいた。私は自分で書評ブログを始める際、これまで他人の書評を日常的に読み、かつ研究した結果、自身に課したことがいくつかあった。 (1)自分の身辺雑記や個…

岩波新書の書評(484)朝永振一郎「物理学とは何だろうか」

大学の物理学専攻の学部に進学志望であったり、将来物理の高等知識が必要な専門職種を希望するわけではない、あくまで一般教養として物理学を知っておきたい人が取り組むべき物理は、次の2つであるように思える。 1つは、高校物理レベルの教科書や大学受験…

岩波新書の書評(483)島田虔次「朱子学と陽明学」(儒教を考える その4)

岩波新書の青、島田虔次「朱子学と陽明学」(1967年)のタイトルになっている朱子学、陽明学のそれぞれの概要をまずは確認しておこう。 朱子学─宋の時代に朱熹(しゅき・朱子ともいう)によって大成された儒教で「新儒教」とされ、特に彼の名をとって「朱子…

岩波新書の書評(482)加地伸行「儒教とは何か」(儒教を考える その3)

(今回は、中公新書の加地伸行「儒教とは何か」についての文章を「岩波新書の書評」ブログですが、例外的に載せます。念のため、加地伸行「儒教とは何か」は岩波新書ではありません。) 今日、儒教とは何かを知りたい人には、そのままのタイトルである中公新…

岩波新書の書評(481)井波律子「論語入門」(儒教を考える その2)

儒教は、古代中国の孔子(前551頃─479年)を祖として、その孔子の教えを継承し発展させた思想・学派の総称である。孔子は、春秋戦国時代末期の魯(ろ)の曲阜(きょくふ・山東省)の人で周の政治を理想とし、魯の国政改革に参加したが失敗して諸国を巡歴した…

岩波新書の書評(480)武内義雄「儒教の精神」(儒教を考える その1)

1938年に創刊され、その初期配本として戦前に刊行された旧赤版の岩波新書の中で、すでに80年近く経た今日の2020年代以降でもいまだ増刷され続け、多くの読者に広く長く読まれている新書がある。例えば、旧赤版の斎藤茂吉「万葉秀歌」上下(1938年)や、同じ…

岩波新書の書評(479)ロビンス「組織行動のマネジメント」

(今回は岩波新書ではない、ロビンス「組織行動のマネジメント」についての書評を「岩波新書の書評」ブログではあるが、例外的に載せます。念のため、ロビンス「組織行動のマネジメント」は岩波新書ではありません。) 昨今では行動経済学や管理経営学、組織…

岩波新書の書評(478)佐藤正午「小説の読み書き」

「昨今活躍の人気作家が、自身が昔に読んだ文学作品の名著を岩波書店の月刊誌『図書』にて毎月紹介していく書評連載企画を後にまとめた岩波新書」という点で、岩波新書の赤、佐藤正午「小説の読み書き」(2006年)は一読して、同岩波新書の柳広司「二度読ん…

岩波新書の書評(477)中尾佐助「栽培植物と農耕の起源」

岩波新書の青、中尾佐助「栽培植物と農耕の起源」(1966年)は、しばしば実施される岩波新書の推薦書目のアンケート企画にて「必ず読んでおくべき名著」として昔から毎回、挙げられる定番で有名な書籍である。本書の概要はこうだ。 「野生時代のものとは全く…

岩波新書の書評(476)原武史「『昭和天皇実録』を読む」(その2)

近代日本における「昭和」は、大正天皇の死去(崩御)を受けて、昭和天皇が践祚(せんそ・天皇の位を受け継ぐこと)した1926年に始まる。この時、昭和天皇(天皇裕仁)は弱冠25歳。以後、昭和の時代の日本は急激に戦争にのめり込んで行く。1931年の満州事変…

岩波新書の書評(475)原武史「『昭和天皇実録』を読む」(その1)

戦前、戦中、戦後の昭和天皇(天皇裕仁)のその時々の意思や発言や行動を知る重要な史料に、原田熊雄「西園寺公と政局」(1950年)と「木戸幸一日記」(1966年)と「昭和天皇独白録」(1946年作成、1990年公開)と「昭和天皇実録」(2014年)がある。これら…

岩波新書の書評(474)田中美知太郎「古典への案内」

他社の新興新書と比べ、日本で最初の新書形態をとった古参の岩波新書に古代ギリシアの哲学や文学や美術の、いわゆる「古典」に関する新書が多いのは、昔は一般に「古典」と言えば主に古代ギリシア時代のそれであり、「プラトン全集」や「アリストテレス全集…

岩波新書の書評(473)川崎庸之「天武天皇」

「天武天皇(?─686年)。生年は不明、在位は673年から686年。舒明天皇と皇極天皇(斉明天皇)の子として生まれた。両親を同じくする中大兄皇子の弟にあたる。皇后は後に持統天皇となった。天智天皇の死後、672年に壬申の乱で大友皇子を倒し、その翌年に即位…

岩波新書の書評(472)桜井哲夫「〈自己責任〉とは何か」

(今回は、講談社現代新書の桜井哲夫「〈自己責任〉とは何か」についての書評を「岩波新書の書評」ブログですが、例外的に載せます。念のため、桜井哲夫「〈自己責任〉とは何か」は岩波新書ではありません。) 先日、講談社現代新書の桜井哲夫「〈自己責任〉…

岩波新書の書評(471)メチニコフ「近代医学の建設者」

私が住んでいる街には、私が気に入った古書店が何件かある。私は定期的にそれら古書店をひやかし半分で覗(のぞ)き、時に古書を買い求めたりするのだが先日、その内の一軒(カモシカ書店!)を覗いたら店頭の特価本の棚に戦前の岩波新書の旧赤版、メチニコ…

岩波新書の書評(470)高橋英夫「友情の文学誌」

岩波新書の赤、高橋英夫「友情の文学誌」(2001年)の概要は以下だ。 「文学者へ成長する漱石と子規。鴎外が遺書筆録を託した賀古鶴所。『近さ』からドラマを生んだ芥川たち。志賀直哉ら、師を持たない白樺派の世代。漢詩の世界、ギリシア・ローマ以来の言説…

岩波新書の書評(469)大島藤太郎「国鉄」

一般に「国鉄」とは、国が保有し、または経営する鉄道事業のことをいうが、日本においては特に「日本国有鉄道」の略称として用いられる。 最近の若い人は、もしかしたら知らないかもしれないが、現在各地域(北海道、東日本、東海、西日本、四国、九州)にあ…

岩波新書の書評(468)岡本良一「大坂城」

大坂城は、戦国時代に上町台地の先端、摂津国東成郡生玉荘大坂に築かれた。大坂城は上町台地の北端に位置する。別称は「錦城(きんじょう)」。現在の大阪城は1930年代に再築されものである。「大阪城跡」として国の特別史跡に指定されている。また城址を含…

岩波新書の書評(467)千葉雅也「現代思想入門」

(今回は、講談社現代新書の千葉雅也「現代思想入門」についての書評を「岩波新書の書評」ブログですが、例外的に載せます。念のため、千葉雅也「現代思想入門」は岩波新書ではありません。) 昨今、人気で売れているという講談社現代新書の千葉雅也「現代思…

岩波新書の書評(466)五木寛之「日記」

以前に岩波新書に執筆し上梓して好評人気で跳(は)ねて、出版部数が伸びメディアにも頻繁に取り上げられ話題になったことを受けて、編集部依頼で岩波新書から連続して二冊目以降を出す運びになるも、前作が大ヒットの先例実績かあるため、「とりあえず今回…

岩波新書の書評(465)小畠郁生「恐竜はなぜ滅んだか」

恐竜は、約二億五000万年前(中世代三畳紀中期)に出現したものがその起源とされている。その後、長きに渡り陸上脊椎(せきつい)動物の頂点に立ったが、約六五00万年前(中世代白亜紀末期)の大量死滅により、鳥類(恐竜の中で唯一の現存群である鳥類…

岩波新書の書評(464)加藤陽子「満州事変から日中戦争へ」

岩波新書の赤、加藤陽子「満州事変から日中戦争へ」(2007年)は、2006年から順次刊行が始まり2010年に完結した岩波新書「シリーズ日本近現代史」全10巻の中の第5巻に当たるものだ。幕末、維新より敗戦、高度成長に至るまでの近現代の日本通史の中で、本書…

岩波新書の書評(463)向井和美「読書会という幸福」

岩波新書の赤、向井和美「読書会という幸福」(2022年)は、翻訳家であり学校図書館の司書も務めているという著者が、読書会の良さ(「読書会という幸福」)や読書会が成功する進め方(「読書会を成功させるためのヒント」)らを、自身の経験から読み手に伝…

岩波新書の書評(462)和田春樹「ペレストロイカ」

近代ロシア史とソビエト連邦史が専門の歴史家、和田春樹による岩波新書の旧ソ連関連書籍には以下の三冊があった。「私の見たペレストロイカ」(1987年)と「ペレストロイカ・成果と危機」(1990年)と「歴史としての社会主義」(1992年)である。 1980年代末…

岩波新書の書評(461)青野太潮「パウロ」

岩波新書の赤、青野太潮「パウロ」(2016年)は、初期キリスト教の使徒であり、新約聖書の著者の一人であったパウロに関する新書である。パウロその人については、 「パウロ(紀元前後─60年頃)。最も重要な使徒とされる人物。パリサイ派に属し、キリスト教…

岩波新書の書評(460)野坂昭如「科学文明に未来はあるか」

野坂昭如(1930─2015年)は、作家で歌手・作詞家であり、タレントや政治家でもあって様々な分野で活躍した多才な人であったが正直、私は昔からこの人には尊敬も感心もできず、あまり好きになれないのである。 野坂昭如といえば、今でもネット上に動画で残っ…

岩波新書の書評(459)稲泉連「ドキュメント 豪雨災害」

岩波新書の赤、稲泉連「ドキュメント・豪雨災害」(2014年)は「豪雨災害」をテーマとしたルポタージュである。2011年9月、和歌山県と奈良県と三重県を襲った台風11号は100名近い犠牲者を出す大水害を紀伊半島各地にもたらした。本書はノンフィクション作家…