アメジローの岩波新書の書評(集成)

アメリカン・ショートヘアのアメジローです。岩波新書の書評が中心の教養読書ブログです。

経済・社会

岩波新書の書評(479)ロビンス「組織行動のマネジメント」

(今回は岩波新書ではない、ロビンス「組織行動のマネジメント」についての書評を「岩波新書の書評」ブログではあるが、例外的に載せます。念のため、ロビンス「組織行動のマネジメント」は岩波新書ではありません。) 昨今では行動経済学や管理経営学、組織…

岩波新書の書評(469)大島藤太郎「国鉄」

一般に「国鉄」とは、国が保有し、または経営する鉄道事業のことをいうが、日本においては特に「日本国有鉄道」の略称として用いられる。 最近の若い人は、もしかしたら知らないかもしれないが、現在各地域(北海道、東日本、東海、西日本、四国、九州)にあ…

岩波新書の書評(455)塩沢美代子「結婚退職後の私たち」

岩波新書の青、塩沢美代子「結婚退職後の私たち・製糸労働者のその後」(1971年)の概要は以下だ。 「15、6歳で製糸工場に就職した女性たちの結婚退職後を追う。二百余名の主婦たちの生活の実態と、厳しい労働条件のもとで過した経験が、彼女たちにどのよう…

岩波新書の書評(451)天畑大輔「〈弱さ〉を〈強み〉に」

岩波新書の赤、天畑大輔「〈弱さ〉を〈強み〉に」(2021年)の表紙カバー裏解説は以下だ。 「四肢マヒ、発話・視覚・嚥下(えんげ)障がい、発話困難。中学の時、突然重度障がい者となった著者は独自のコミュニケーション法を創り、二四時間介助による一人暮…

岩波新書の書評(449)江川紹子「『カルト』はすぐ隣に」

過去に私自身や私の家族や親族や知り合いで、いわゆる「カルト」の新興宗教や詐欺的グループや過激派政治団体に入信したり加入した人はいない。これは自分にとって誠に幸運なことであって、逆にそういった「カルト」に身近な人が入信・加入した人はとても気…

岩波新書の書評(444)池上彰「先生!」

岩波新書の赤、池上彰「先生!」(2013年)の概要は以下だ。「『先生!』─この言葉から喚起されるエピソードは何ですか?池上彰さんの呼びかけに、現場で実際に教えている人のほか、作家、医師、職人、タレントなど各界で活躍の二十七名が答えた。いじめや暴…

岩波新書の書評(442)大竹文雄「行動経済学の使い方」

岩波新書の赤、大竹文雄「行動経済学の使い方」(2019年)の概要はこうだ。「私たちの生活は起きてから寝るまで意思決定の連続である。しかし、そのほとんどは、習慣的になっていて無意識に行われている。…人間の意思決定には、どのような特徴があるのだろう…

岩波新書の書評(437)広岡達朗「意識改革のすすめ」 野村克也「野村ノート」

(今回は岩波新書ではない、広岡達朗「意識改革のすすめ」、野村克也「野村ノート」についての文章を「岩波新書の書評」ブログではあるが、例外的に載せます。念のため、広岡「意識改革のすすめ」と野村「野村ノート」は岩波新書ではありません。)「名将」…

岩波新書の書評(433)兼子仁「国民の教育権」

岩波新書の青、兼子仁「国民の教育権」(1971年)は、日本国憲法や教育基本法ら法的理念から、現実の教育をめぐる理念浸透具合の不足ならびに明らかに間違った方向への反動誘導の弊害を実際の学校現場の問題や教育「改革」の政治の誤りとして指摘していく、…

岩波新書の書評(427)佐高信「戦後を読む 50冊のフィクション」

評論家でありジャーナリストである佐高信に関しては、廃刊になって今ではもうないが、以前にあった雑誌「噂の眞相」での佐高の連載「タレント文化人筆刀両断!」など私はよく読んでいた。私は10代の頃から岡留安則が編集発行の「噂の眞相」を定期的に読んで…

岩波新書の書評(426)沢崎坦「馬は語る」

昔に旅行中、家から持ってきた書籍を旅の中途で全て読み尽くしてしまって、移動中や滞在先にて読む本が弾切れになり、旅先の現地で新しく読む本を仕入れようと思って、とある街の古書店に入った。もちろん、一見(いちげん)の知らない書店である。そのとき…

岩波新書の書評(423)平松守彦「地方からの発想」

岩波新書の赤、平松守彦「地方からの発想」(1990年)は元大分県知事の平松守彦が知事在任中に著した書籍である。私は大分県出身の現在大分市在住なのだが、平松守彦が県知事退任の後、大分市中心街の老舗(しにせ)百貨店で私用で買い物している姿を一時期…

岩波新書の書評(422)阿波根昌鴻「米軍と農民」

岩波新書の青、阿波根昌鴻(あはごん・しょうこう)「米軍と農民」(1973年)は、私にはとても懐かしい書籍である。近年、本書は復刊されて容易に手に入り読めるが、昔は長い間、絶版品切れの入手困難でなかなか読めなかった。私が岩波新書の阿波根昌鴻「米…

岩波新書の書評(409)指原莉乃「逆転力」

(今回は、講談社AKB48新書、指原莉乃「逆転力・ピンチを待て」についての書評を「岩波新書の書評」ブログですが、例外的に載せます。念のため、指原莉乃「逆転力」は岩波新書ではありません。)先日、指原莉乃「逆転力・ピンチを待て」(2014年)を読んだ。…

岩波新書の書評(408)齋藤孝「『できる人』はどこがちがうのか」

(今回は、ちくま新書、齋藤孝「『できる人』はどこがちがうのか」についての書評を「岩波新書の書評」ブログですが、例外的に載せます。念のため、齋藤孝「『できる人』はどこがちがうのか」は岩波新書ではありません。)明治大学文学部教授(教育学)の齋…

岩波新書の書評(406)寺沢拓敬「⼩学校英語のジレンマ」

岩波新書の⾚、寺沢拓敬「⼩学校英語のジレンマ」(2020年)の表紙カバー裏解説は次のようになっている。「⼆0⼆0年四⽉から⼩学校で教科としての英語が始まる。『⽇本⼈の英語⼒向上の切り札』との期待と、『国語に悪い影響』『英語嫌いが増える』などの…

岩波新書の書評(405)⼭岡淳⼀郎「⽣きのびるマンション」

岩波新書の⾚、⼭岡淳⼀郎「⽣きのびるマンション」(2019年)の概要はこうだ。「修繕積⽴⾦をめぐるトラブル、維持管理ノウハウのないタワーマンション…。難題⼭積のなか、住⺠の⾼齢化と建物の⽼朽化という『⼆つの⽼い』がマンションを直撃している。廃墟…

岩波新書の書評(404)⽊下武男「労働組合とは何か」

岩波新書の⾚、⽊下武男「労働組合とは何か」(2021年)の上梓に⾄る概要はこうだ。もともと著者が「労働組合論」の講義を法政⼤学にて1984年から⼗数年間、担当してきて、通年授業の半分以上は労働組合史の歴史部分であって、これを⼀冊の書籍にまとめたい…

岩波新書の書評(403)佐和隆光「経済学とは何だろうか」

岩波新書の⻩、佐和隆光「経済学とは何だろうか」(1982年)は、「経済学とは何か」とか「経済学とは何であるか」のタイトルではない。「経済学とは何だろうか」である。この「何だろうか」の優しく素朴な問いかけが、ともすれば10代の少年少⼥向け読み物た…

岩波新書の書評(397)本間龍「原発プロパガンダ」

岩波新書の赤、本間龍「原発プロパガンダ」(2016年)のタイトル中にある「プロパガンダ」については、「プロパガンダとは、政治思想宣伝のこと。ある決まった考えや思想・主義あるいは宗教的教義などを、一方的に喧伝(けんでん)するようなものや、刷り込…

岩波新書の書評(395)村上陽一郎「コロナ後の世界を生きる」

2019年以降、短期間で一気に世界中に蔓延した新型コロナウイルス感染症(COVID─19)の昨今での日本国内での深刻な影響をもとに、「コロナで世界はどう変わったか」「コロナ後の世界で私達はコロナウイルスとどう向き合っていくべきか」を問う書籍が多く出さ…

岩波新書の書評(388)鈴木敏夫「仕事道楽 新版 スタジオジブリの現場」

テクノバンドの「YMO」について、以前に元「ピチカート・ファイヴ」(Pizzicato・Five)の小西康陽が「YMOは最高だったけど、でも彼らを取り巻く文化人とかスタッフとか正直言って嫌だったな。ただ理由なく嫌いっていうのは、何かわかんないけど、ゴメン」と…

岩波新書の書評(385)見田宗介「現代社会の理論」

岩波新書の赤、見田宗介「現代社会の理論」(1996年)は1996年初版で2016年には第30刷となっており、相当に多くの人に長い間読まれている。本書のサブタイトルは「情報化・消費化社会の現在と未来」であり、全四章よりなる。その目次を書き出してみると、「…

岩波新書の書評(380)筑紫哲也「スローライフ」

岩波新書の赤「スローライフ」(2006年)の著者である筑紫哲也については、「筑紫哲也(1935─2008年)はジャーナリスト、ニュースキャスター。大分県日田市出身。1959年、早稲田大学政治経済学部卒業後、朝日新聞社に入社。政治部記者、ワシントン特派員、朝…

岩波新書の書評(377)亀田達也「モラルの起源」

岩波新書の赤、亀田達也「モラルの起源」(2017年)によれば、人間のもつ価値や倫理は、自然科学の経験的事実による知識と人文科学の理論的考察による知恵よりなる。そこで本書では人間社会の利他、共感、正義やモラルといったテーマに関し、自然知と人文知…

岩波新書の書評(374)玄田有史「希望のつくり方」

原理的にいって、希望はまず絶望ないしは失望や虚無の状況がないと生まれない。人は、ある日ある時、突然おもむろに漠然と希望を抱くのではなくて、平穏な日常から不条理に突如、絶望に叩き込まれたり失望や虚無を激しく感じた後に改めて希望を自身や状況の…

岩波新書の書評(368)本田由紀「教育は何を評価してきたのか」

教育社会学専攻の本田由紀に関しては前々から知ってそれとなく著書も読んでいたが、私が彼女のファンになったのは本田由紀が参加した岩波新書「岩波新書で『戦後』をよむ」(2015年)が決定的だった。岩波新書の「岩波新書で『戦後』をよむ」は「戦後」に出…

岩波新書の書評(364)山口誠「客室乗務員の誕生」

航空会社の客室乗務員の正式名称はキャビン・アテンダント(Cabin・Attendant)であり、今日一般的には「CA」と呼ばれる。客室乗務員とは上空を飛行する旅客機の客室に常駐し、乗客の安全確保や飲食提供などの乗務に専従する航空界ならではの職業である。航…

岩波新書の書評(355)福間良明「『勤労青年』の教養文化史」

岩波新書の赤、福間良明「『勤労青年』の教養文化史」(2020年)は、家計困難など諸々の家庭の事情で大学・全日制高校進学を断念して就職した戦後の日本の「勤労青年」たちが、働きながらも夜間の定時制高校や通信教育で積極的に学ぼうとする日本の戦後社会…

岩波新書の書評(337)松田道雄「私は二歳」

岩波新書の青、松田道雄「私は二歳」(1961年)は小児科医師で育児評論家である著者による育児百科事典的な新書だ。タイトル通り「二歳前後の子ども」の育児について、食事、しつけ、病気、ケガ、事故、いたずら、友だち遊び…の各観点から子育て中の父母の悩…