アメジローの岩波新書の書評(集成)

アメリカン・ショートヘアのアメジローです。岩波新書の書評が中心の教養読書ブログです。

文学・芸術

岩波新書の書評(434)今野真二「『広辞苑』をよむ」

「広辞苑(こうじえん)」は、日本語国語辞典である。もともとは戦前昭和より言語学者の新村出(しんむら・いずる)が国語辞典の執筆をやっていて、当初は博文館という出版社から「辞苑(じえん)」という書名の辞書を出していたが、戦後に今後の日本語文化…

岩波新書の書評(430)中村邦生「はじめての文学講義」

岩波ジュニア新書の中村邦生「はじめての文学講義」(2015年)は、渋谷教育学園渋谷中学高等学校にて(私は本新書を読むまで知らなかったが、本校は中学受験の世界では「渋渋」と略称され、都内の中高一貫校の中では有数の入学難関校であるという)、作家で…

岩波新書の書評(402)細⾕博「太宰治」(その3)

太宰治の本名は津島修治である。太宰は⻘森県北津軽郡⾦⽊村の出⾝である。太宰の⽣家は県下有数の⼤地主であった。津島家は「⾦⽊の殿様」と呼ばれていた。⽗は県議会議員も務めた地元の名⼠であり、多額の納税により貴族議員にもなった。津島家は七男四⼥…

岩波新書の書評(401)細⾕博「太宰治」(その2)

「太宰治全集」にて私には⼀時期、太宰と⻑兄で家⻑たる兄・⽂治とのやりとりがある作品箇所だけ、わざと選んで読み返す楽しみの趣向があった。太宰治の本名は津島修治である。太宰は⻘森県北津軽郡⾦⽊村の出⾝である。太宰の⽣家は県下有数の⼤地主であっ…

岩波新書の書評(400)細⾕博「太宰治」(その1)

おそらく現在でも絶版・品切れにはなっていないと思うが、昔からちくま⽂庫で「夏⽬漱石全集」全⼗巻(1994年)と「芥川⿓之介全集」全⼋巻(1994年)と「太宰治全集」全⼗巻(1994年)が出ていて、私は⼀時期この三⼈の⽂庫全集を書棚に⼤事において毎⽇、…

岩波新書の書評(378)椎名誠「活字のサーカス」

本と読書についてのエッセイである「活字のサーカス」(1987年)を始めとする「活字博物誌」(1998年)と「活字の海に寝ころんで」(2003年)と「活字たんけん隊」(2010年)の岩波新書から出ている椎名誠の「活字四部作」は、何を読んでもだいたい面白い。…

岩波新書の書評(373)赤坂憲雄「武蔵野をよむ」

岩波新書の赤、赤坂憲雄「武蔵野をよむ」(2018年)の表紙カバー裏解説文はこうだ。「国木田独歩『武蔵野』。二六歳の青年が失恋の果てに綴(つづ)り、一二0年前に発表されたこの短篇(岩波文庫でわずか二八頁)は、当時にして新たな近代の感性に満ち、今…

岩波新書の書評(367)上田篤「橋と日本人」

岩波新書の黄、上田篤「橋と日本人」(1984年)は、日本の橋に関するややマニアックな本で、私は橋の専門家ではないし橋の鑑賞が趣味というわけでもないので、日本の橋への偏愛にあふれる著者の本文記述に時に圧倒されそうにもなるけれど(笑)、一読して非常…

岩波新書の書評(354)姜尚中「姜尚中と読む夏目漱石」(その4)(夏目漱石「こころ」を読み解く3)

(前回からの続き。以下、「夏目漱石『こころ』パーフェクトガイド」ブログでのブログ主様の読み方解釈を明かした「ネタばれ」を含みます。かのブログを未読の方は、これから新たに読む楽しみがなくなりますので、ご注意下さい。)(3)の「なぜ私は死期が迫っ…

岩波新書の書評(353)姜尚中「姜尚中と読む夏目漱石」(その3)(夏目漱石「こころ」を読み解く2)

(前回からの続き。以下、「夏目漱石『こころ』パーフェクトガイド」ブログでのブログ主様の読み方解釈を明かした「ネタばれ」を含みます。かのブログを未読の方は、これから新たに読む楽しみがなくなりますので、ご注意下さい。)さて、以下では「夏目漱石…

岩波新書の書評(352)姜尚中「姜尚中と読む夏目漱石」(その2)(夏目漱石「こころ」を読み解く1)

前回、岩波ジュニア新書の姜尚中「姜尚中と読む夏目漱石」(2016年)についての書評を書いた。今回と次回と次々回の三回連続で姜尚中の新書から離れて、しかし同じテーマの夏目漱石について「岩波新書の書評」タイトルではあるけれども、例外的に岩波新書云…

岩波新書の書評(351)姜尚中「姜尚中と読む夏目漱石」(その1)

岩波ジュニア新書は10代の少年少女向け読み物(ジュヴナイル)であるから、岩波ジュニア新書の姜尚中(かんさんじゅん)「姜尚中と読む夏目漱石」(2016年)は、夏目漱石の名は知ってはいてもまだ漱石作品を読んだことがない、ないしは漱石の小説は読んだこ…

岩波新書の書評(345)高村薫「作家的覚書」

岩波新書の赤、高村薫「作家的覚書」(2017年)は、2014年から2016年まで岩波書店の月刊誌「図書」に連載した時評を中心に編(あ)んだ作家・高村薫による時評集である。「『図書』誌上での好評連載を中心に編む時評集。一生活者の視点から、ものを言い、日…

岩波新書の書評(333)ねじめ正一「ぼくらの言葉塾」

詩人のねじめ正一のよさは、詩創作でも詩鑑賞でもこの人は、どちらかといえば詩作の内容よりも言葉の肉感の厚みや剥(む)き出しで生(なま)のままの言質の素材感や言葉そのものの強い響きを好んで重んじる、いわば「詩人の格闘系の肉体派」とも称すべき所…

岩波新書の書評(330)竹内啓「偶然とは何か」

詩人のねじめ正一のよさは、詩創作でも詩鑑賞でもこの人は、どちらかといえば詩作の内容よりも言葉の肉感の厚みや剥(む)き出しで生(なま)のままの言質の素材感や言葉そのものの強い響きを好んで重んじる、いわば「詩人の格闘系の肉体派」とも称すべき所…

岩波新書の書評(320)川西政明「小説の終焉」

岩波新書の赤、川西政明「小説の終焉」(2004年)の概要はこうだ。著者の川西政明によれば、二葉亭四迷の「浮雲」(1887年)から始まった日本の近代小説にてテーマとされてきた「私」「家」「性」「神」の問題はほぼ書き尽くされ、いま小説は終焉を迎えよう…

岩波新書の書評(309)近藤譲「ものがたり西洋音楽史」

私は10代の時から洋楽ロックやテクノのダンス・ミュージックや日本の歌謡曲や演歌が好きで継続してよく聴いていたけれど、クラシックだけは若い頃なぜか縁遠くて、そこまで聴き込んでいなかった。後に、だいぶ年取ってある時期をからクラシック音楽の素晴ら…

岩波新書の書評(299)芦田愛菜「まなの本棚」

(今回は、芦田愛菜「まなの本棚」についての書評を「岩波新書の書評」ブログではあるが、例外的に載せます。念のため、芦田「まなの本棚」は岩波新書ではありません。)先日、芦田愛菜「まなの本棚」(2019年)を読んだ。芦田愛菜は女優、タレントである。…

岩波新書の書評(286)大野晋「日本語練習帳」

岩波新書の赤、大野晋「日本語練習帳」(1999年)は、初版から売れ続け累計200万近くの発行部数があるそうで、歴代の岩波新書の中でも一二を争う大ヒットとなっている。「なぜそこまで人気で売れるのか。広く読まれているのはなぜなのか!?」本書の内容を述べ…

岩波新書の書評(271)筒井康隆「短篇小説講義」

私が10代の高校生だった1980年代末に筒井康隆は今より流行っていた。私も含め周りの人達は筒井「文学部唯野教授」(1989年)を読んでよく話題になっていたし、皆が筒井康隆のドタバタ・コメディに爆笑していた。岩波新書の赤、筒井康隆「短篇小説講義」(199…

岩波新書の書評(270)柳広司「二度読んだ本を三度読む」

岩波新書の赤、柳広司「二度読んだ本を三度読む」(2019年)は、岩波書店の月刊誌「図書」(2017年10月号から2019年2月号)で毎月一作品ずつ、小説もしくは戯曲を取り上げ、若い読者にとっての「初読み本」ガイド、ないしは年齢を重ねた人達へ向けての再読…

岩波新書の書評(257)大江健三郎「新しい文学のために」

岩波新書の歴史にて赤版から青版へ、青版から黄版へ、黄版から新赤版への各移行時に最初の第1回配本のシリアルナンバー1の歴代新書は、どれも力が入っている。岩波新書の赤、大江健三郎「新しい文学のために」(1988年)は新赤版のシリアルナンバー1、最…

岩波新書の書評(254)ノーマ・フィールド「小林多喜二」

岩波新書の赤、ノーマ・フィールド「小林多喜二」(2009年)にて語られている小林多喜二その人について、まず確認しておくと、「小林多喜二(1903─33年)。ロシア文学に傾倒、労働運動に参加。『戦旗』に昭和初年より代表的プロレタリア作家として活躍。1929…

岩波新書の書評(230)梯久美子「原民喜」

文学者の原民喜については、「原民喜(1905─51年)。日本の詩人、小説家。広島で被爆する。そのときの体験を元にした詩『原爆小景』や小説『夏の花』の作品で知られる。のちに鉄道自殺により死去。享年45」岩波新書の赤、梯久美子(かけはし・くみこ)「原民…

岩波新書の書評(194)斎藤茂吉「万葉秀歌」

昔の人は、今の人とは違い詩集を読んだり詩作をよくしたという。同様に和歌にもよく親しんだ。岩波新書の赤、斎藤茂吉「万葉秀歌」上下巻(1938年)は戦前の新書であるが、初版からの累計出版数にて歴代の岩波新書の中でベストの上位に常に位置し、これまで…

岩波新書の書評(181)大江健三郎「あいまいな日本の私」

ノーベル文学賞受賞記念講演たる川端康成の「美しい日本の私」(1968年)には、果たして「美しいのは日本」なのか、それとも「美しいのは私なのか」の修飾の係り方による意味相違の問題があった。この答えは、本講演の英訳にて「Japan・the・Beautiful・and…

岩波新書の書評(180)猪野謙二「小説の読みかた」

各々個別の文学作品に対して、「この作品はこのように読むべき」という正解の正統な読み方など、そもそも存在しない。個々の文学作品を各人が自由に読んで楽しんで、その人なりに読めれば、それが自然と正解の読み方だ。しかし、その一方で「この作品は従来…

岩波新書の書評(171)斎藤美奈子「日本の同時代小説」

岩波新書の赤、斎藤美奈子「日本の同時代小説」(2018年)の概要はこうだ。「メディア環境の急速な進化、世界情勢の転変、格差社会の深刻化、そして戦争に大震災。創作の足元にある社会が激変を重ねたこの50年。『大文字の文学の終焉』が言われる中にも、新…

岩波新書の書評(152)河原理子「戦争と検閲 石川達三を読み直す」

岩波新書の赤、河原理子「戦争と検閲・石川達三を読み直す」(2015年)の表紙カバー裏解説文は相当に力が入っている。「『生きている兵隊』で発禁処分を受けた達三。その裁判では何が問われたのか。また、戦後のGHQの検閲で問われたこととは?公判資料や本人…

岩波新書の書評(151)成毛眞「面白い本」

岩波新書の赤、成毛眞「面白い本」(2013年)は、著者が太鼓判を押す「これは面白い!」のノンフィクション書籍を100冊紹介する内容だ。世評の読書アンケートにて本新書があまりにも人気で評判がよいので先日、手にして読んでみた。本書は「面白い本」を100…