アメジローの岩波新書の書評(集成)

岩波新書の書評が中心の教養読書ブログです。

世界史・日本史

岩波新書の書評(517)田中彰「小国主義」(その3 石橋湛山)

前々回、岩波新書の赤、田中彰「小国主義」(1999年)の書評を書いた。本新書の中で「近代日本の小国主義の系譜」として中江兆民と石橋湛山が紹介されていたので、前回と今回で中江と石橋について改めて個別に書いてみたい。 岩波文庫に「中江兆民評論集」(…

岩波新書の書評(516)田中彰「小国主義」(その2 中江兆民)

前回、岩波新書の赤、田中彰「小国主義」(1999年)の書評を書いた。本新書の中で「近代日本の小国主義の系譜」として中江兆民と石橋湛山が紹介されていたので、今回と次回で中江と石橋について、特に「小国主義」という観点にとらわれることなく自由に書い…

岩波新書の書評(515)田中彰「小国主義」(その1)

岩波新書の赤、田中彰「小国主義」(1999年)は、タイトルの「小国主義」の反対である「大国主義」を「国際関係において、大国が自国の強大な力を背景に小国を圧迫する態度」「経済力・軍事力にすぐれた国がその力を背景に小国に臨む高圧的な態度」という辞…

岩波新書の書評(513)ドイッチャー「ロシア革命五十年」

前回に引き続き今回も「ロシア革命」についての話である。 ヨーロッパ近代史を本質的に知るには、それぞれに各地域で起こった市民革命を中心に学ぶのが有効だ。西洋近代において、特に注目すべき革命はイギリス革命(ピューリタン革命+名誉革命)、アメリカ…

岩波新書の書評(512)クリストファー・ヒル「レーニンとロシヤ革命」

「季節と読書」の関係で言うと毎年、夏の暑い盛りの八月になると、太平洋戦争ら先の日本の戦争についての書籍をなぜか読みたくなる。これは私が紛(まぎ)れもない日本人であるからに相違ない。同様に冬の寒い季節になると、今度はロシア革命に関する書籍を…

岩波新書の書評(509)米原謙「徳富蘇峰」

(「岩波新書の書評」ですが、中公新書の米原謙「徳富蘇峰・日本ナショナリズムの軌跡」に関連して、今回は徳富蘇峰について書きます。念のため、米原謙「徳富蘇峰・日本ナショナリズムの軌跡」は岩波新書ではありません。) 徳富蘇峰(1863─1957年)は明治…

岩波新書の書評(508)竹内実「毛沢東」

「毛沢東(1893─1976年)は中国共産党、中華人民共和国の最高指導者。湖南省出身。反軍閥運動・農民運動を行って頭角を現し、1921年、中国共産党の設立に参加した。31年創立された中華ソヴィエト共和国臨時政府の主席になり、長征の途上の遵義会議で党内の主…

岩波新書の書評(507)古田元夫「東南アジア史10講」

東南アジアは、アジアのうち南シナ海周辺に位置する国々を指す地域区分である。インドシナ半島、マレー半島、インドネシア諸島、フィリピン諸島とその他の群島部よりなり、ほとんどの地域が年中高温の熱帯気候に属する。 地図上で見ると、東南アジアは右上の…

岩波新書の書評(501)芹沢長介「日本旧石器時代」

岩波新書の黄、芹沢長介「日本旧石器時代」(1982年)に関連させて、日本の原始時代の考古学上からする時代区分論の概要を確認しておこう。 まず土器の使用別による文化的時代区分がある。縄文土器が使われた時代は「縄文文化」(約1万3000年前から前4世紀…

岩波新書の書評(500)ノーマン「忘れられた思想家 安藤昌益のこと」(その2)

カナダの有能な外交官であり、かつ優れた日本近代史の研究者であったハーバート・ノーマンの日本近代史研究の著作には、岩波文庫の「日本における近代国家の成立」(1947年、岩波文庫での再刊は1993年)、同岩波文庫の「クリオの顔・歴史随想集」(1956年、…

岩波新書の書評(499)ノーマン「忘れられた思想家 安藤昌益のこと」(その1)

カナダの有能な外交官であり、かつ優れた日本近代史の研究者であったハーバート・ノーマンが好きだ。私は昔からノーマンの日本史研究の著作を愛読している。ノーマンその人については、 「エドガートン・ハーバート・ノーマン(1909─57年)はカナダの外交官…

岩波新書の書評(497)保阪正康「昭和史のかたち」

一般に「××のかたち」といえば、そのものの実体や全体像を表す比喩として間接的に用いられる。例えば「新しい家族のかたち」とか、それこそ司馬遼太郎「この国のかたち」というように。ところが岩波新書の赤、保阪正康「昭和史のかたち」(2015年)は、昭和…

岩波新書の書評(495)成田龍一「歴史像を伝える『歴史叙述』と『歴史実践』」

岩波新書の「シリーズ・歴史総合を学ぶ」全三巻は、2022年4月から全国の高等学校で始まる「歴史総合」の新科目導入に合わせて、「歴史総合」授業の実践の方法とその可能性を、具体的個々の歴史素材の教材研究を通して指し示そうとするものである。今般、新た…

岩波新書の書評(487)岡義武「国際政治史」(岩波全書を読む3)

岩波全書の岡義武「国際政治史」(1955年)は、ヨーロッパ近代の国際政治の歴史を概観したものである。本書は第一章の「ヨーロッパにおける国際社会の成立」の欧州にて主権国家の成立たる絶対主義の出現より始まり、市民革命から帝国主権へ、さらには全体主…

岩波新書の書評(476)原武史「『昭和天皇実録』を読む」(その2)

近代日本における「昭和」は、大正天皇の死去(崩御)を受けて、昭和天皇が践祚(せんそ・天皇の位を受け継ぐこと)した1926年に始まる。この時、昭和天皇(天皇裕仁)は弱冠25歳。以後、昭和の時代の日本は急激に戦争にのめり込んで行く。1931年の満州事変…

岩波新書の書評(475)原武史「『昭和天皇実録』を読む」(その1)

戦前、戦中、戦後の昭和天皇(天皇裕仁)のその時々の意思や発言や行動を知る重要な史料に、原田熊雄「西園寺公と政局」(1950年)と「木戸幸一日記」(1966年)と「昭和天皇独白録」(1946年作成、1990年公開)と「昭和天皇実録」(2014年)がある。これら…

岩波新書の書評(473)川崎庸之「天武天皇」

「天武天皇(?─686年)。生年は不明、在位は673年から686年。舒明天皇と皇極天皇(斉明天皇)の子として生まれた。両親を同じくする中大兄皇子の弟にあたる。皇后は後に持統天皇となった。天智天皇の死後、672年に壬申の乱で大友皇子を倒し、その翌年に即位…

岩波新書の書評(468)岡本良一「大坂城」

大坂城は、戦国時代に上町台地の先端、摂津国東成郡生玉荘大坂に築かれた。大坂城は上町台地の北端に位置する。別称は「錦城(きんじょう)」。現在の大阪城は1930年代に再築されものである。「大阪城跡」として国の特別史跡に指定されている。また城址を含…

岩波新書の書評(464)加藤陽子「満州事変から日中戦争へ」

岩波新書の赤、加藤陽子「満州事変から日中戦争へ」(2007年)は、2006年から順次刊行が始まり2010年に完結した岩波新書「シリーズ日本近現代史」全10巻の中の第5巻に当たるものだ。幕末、維新より敗戦、高度成長に至るまでの近現代の日本通史の中で、本書…

岩波新書の書評(458)田中優子 松岡正剛「江戸問答」

岩波新書の赤、田中優子・松岡正剛「江戸問答」(2021年)の概要はこうだ。 「江戸問答とは、江戸の社会文化から今に響きうる問いを立てることである。近世から近代への転換期に何が分断され、放置されたのか。面影、浮世、サムライ、いきをめぐる、時間・場…

岩波新書の書評(457)芝健介「ヒトラー」

岩波新書の赤、芝健介「ヒトラー」(2021年)のタイトルにもなっているヒトラーについて、20世紀を生きてきた現代の人なら彼のことを知らない人はいないとは思うが、念のため確認しておくと、 「アドルフ・ヒトラー(1889─1945年)は、オーストリア生まれの…

岩波新書の書評(454)立石博高「スペイン史10講」

一国の歴史を古代から近現代まで新書の一冊で全10講の内に一気に書き抜こうとする岩波新書の「××史10講」シリーズである。もともと本企画は、坂井榮八郎「ドイツ史10講」(2003年)と柴田三千雄「フランス史10講」(2006年)と近藤和彦「イギリス史10講」(2…

岩波新書の書評(438)金田章裕「景観からよむ日本の歴史」

私はテレビといえば、せいぜいニュースと天気予報を毎日、軽く見る程度なのだが最近、面白くてよく視聴している番組があった。NHKの「ブラタモリ」(2008年─ )である。この番組は、歴史地理的な地形や景観に特化した散策ロケ番組で、開墾・干拓事業や街道・…

岩波新書の書評(431)藤谷俊雄「『おかげまいり』と『ええじゃないか』」

岩波新書の青、藤谷俊雄「『おかげまいり』と『ええじゃないか』」(1968年)は、そのタイトルからして「おかげまいり」と「ええじゃないか」が等価の同量で等しく論じられているように思えるけれど、実はそうでない。本書では主に「おかげまいり」について…

岩波新書の書評(428)渡辺金一「中世ローマ帝国」

中世ヨーロッパ史専攻で、なかでも東ローマ帝国(ビザンツ帝国)に関する多くの論文や書籍や訳書を著している渡辺金一の岩波新書は、「中世ローマ帝国」(1980年)と「コンスタンティノープル千年」(1985年)の二冊がある。後出の「コンスタンティノープル…

岩波新書の書評(420)吉田裕「アジア・太平洋戦争」(その2)

(前回からの続き)まずは太平洋戦争の日米開戦に至るまでの過程を以下の簡略な年表にて確認しておこう。1931年9月・柳条湖事件、満州事変(1931─33年) 1932年3月・満州国建国宣言 1933年3月・日本が国際連盟脱退を通告(※ドイツの国連脱退は1933年10月、イ…

岩波新書の書評(419)吉田裕「アジア・太平洋戦争」(その1)

最近、気になるのは、日本近代史に関し政治的・人道的な日本の問題には、それを「アメリカや中国らによる日本を不当におとしめる謀略の陰謀」と解釈して自国の日本の問題責任をどこまでも回避し、他方で歴史的に日本の国や日本人が優れていた点は過大に評価…

岩波新書の書評(415)都出比呂志「古代国家はいつ成立したか」

岩波新書の赤、都出比呂志「古代国家はいつ成立したか」(2011年)は時折、定期的に読み返してみて「専門の研究者による一般読者へ向けての日本古代史研究に関する非常にサーヴィス精神に満ちた親切な語り下ろしの読み物」といった好感の思いが毎度、私はす…

岩波新書の書評(410)田中彰「明治維新と西洋文明」

岩波新書の赤、田中彰「明治維新と西洋文明」(2003年)の概要はこうだ。 「男⼥の⾵俗、議会、⼯場、公園に博物館─ 明治初年、近代化の課題を背負って⼆年近い欧⽶視察の旅を続けた『岩倉使節団』にとって、⻄洋⽂明との出合いは衝撃の連続だった。その公的…

岩波新書の書評(399)藤間生大「倭の五王」

「倭の五王」は、中国南朝の宋の正史「宋書」に登場する倭国の五人の倭王、讃・珍・済・興・武をいう。421年から502年の間に五人の倭王が宋ら南朝と13回通交した記事が「宋書」などにある。この間、およそ1世紀近くに渡り、晋、宋、斉の諸帝国に遣使入貢し…