世界史・日本史
現在の地震研究では一応は試みられてはいるが、確固たる科学理論に基づく決定論的な「地震予知」はできないので、統計に基づいた過去の地震発生事例、文献史料や過去記録のデータベースからその発生周期を確率論的に導き出す「地震予測」が今日では便宜的に…
源頼朝といえば、言わずと知れた鎌倉幕府を開いた初代将軍であり、岩波新書の青、永原慶二「源頼朝」(1958年)は頼朝の出生から死去までの生涯を時系列で一気に書き抜いた評伝である。あらためて源頼朝の概要を押さえておくと、 「源頼朝(1147─99年)。義…
岩波新書の青、野田又夫「ルネサンスの思想家たち」(1963年)の書き出しはこうだ。「ルネサンス時代をだいたい十五世紀から十六世紀と見て、そこにあらわれた思想家の一人一人の像をできるだけ近い距離でえがいて見ようと思う。そして同時にそれらの全部を…
私は一時期、天皇の公私にわたる発言や会話を記録し紹介した書籍を熱心に読み漁(あさ)っていたことがあった。天皇が日々どういった公式発言や近親の者たちと会話をしたのかに大変に興味があったからだ。特に昭和天皇(天皇裕仁)についての、そうした記録…
私は一時期、天皇の公私にわたる発言や会話を記録し紹介した書籍を熱心に読み漁(あさ)っていたことがあった。天皇が日々どういった公式発言や近親の者たちと会話をしたのかに大変に興味があったからだ。そうした記録に残されている昭和天皇(天皇裕仁)と…
1945年の敗戦以前の戦前の生まれで戦争を経験した世代で、戦後に戦時の日本の軍国主義の戦争責任を問われて、「日本の近代は明治と大正はそれなりに民主的であったし国民の自由はある程度は保障され、社会の時代雰囲気は明るいものがあった。明治国家のナシ…
1991年、「ペレストロイカ」の過程はついにソ連共産党とソ連邦の終わりをもたらし、計画経済体制は崩壊した。1917年のロシア革命から続いたソ連型の社会主義、国家社会主義の破綻が明らかになった。1917年のロシア革命によるソ連邦の社会主義国成立から1991…
華厳宗大本山東大寺は聖武天皇の発願(ほつがん)に始まる寺院である。東大寺といえば、大仏殿に鎮座する盧舎那仏(るしゃなぶつ)が何よりも想起されるに違いない。岩波新書の赤、森本公誠「東大寺のなりたち」(2018年)にも書かれてある通り、東大寺の歴…
先日、岩波新書の赤、小長谷正明「医学探偵の歴史事件簿」(2014年)を読んでみた。「歴史上の人物の行動には病気が深く関わっていた。遺伝子鑑定や歴史記録の解読を通じて、その真相を推理する。病気持ちの大統領や独裁者、王様たちが歴史をどう変えたか。…
岩波新書の黄、家永三郎「日本文化史」(1982年)は、原始・古代から近世の時代にかけての日本文化の歴史の概観である。以下のような「Ⅰ・原始社会の文化」の章での著者の家永三郎による書き出しを読むにつけ、「いかん、この人は従来型の国家の歴史を中心と…
漢の武帝(前159─87年)は、前漢第7代皇帝である。前漢は武帝時代に事実上の中央集権化が達成され、武帝は匈奴を始め周辺民族を従属させて儒学の官学化ををはかり、漢の全盛期を形成した。岩波新書の青、吉川幸次郎「漢の武帝」(1949年)は、そうした漢の…
古典のマルクス「ルイ・ボナパルトのブルュメール18日」(1852年)から、比較的近年の遅塚忠躬(ちづか・ただみ)「フランス革命・歴史における劇薬」(1997年)まで、フランス革命に関する書籍は昔から誰の何を読んでも面白い。それはフランス革命を叙述す…
書籍は著者が書きたいものを書き、それを出版して世に問いたいから彼は本を執筆するのが常だが、時に著者よりも出版社や編集者の方に売れ筋狙いや時代状況を勘案して「こうした書籍を自社から出して是非世に問いたい」強い思いがまずあって、後に著者に執筆…
「世上の宗教家としての評価や専門の歴史研究にて、蓮如に様々な問題が指摘されているけれど、蓮如にはどこか不思議な謎めいた影があり、私はそこに心ひかれて親しみを感じる。私は蓮如が好きなのだ」。岩波新書の赤、五木寛之「蓮如」(1994年)は、蓮如の…
(前回からの続き)朝鮮の人々の日本への渡航による「在日朝鮮人の形成」について、梶村秀樹「朝鮮史」(1977年)に「在日朝鮮人人口の推移」の図表が掲載されている(163ページ)。そのグラフによると、在日朝鮮人の人口推移は1911年は2527人、1915年は3917…
前回からの続きで、梶村秀樹「朝鮮史」(1977年)にて特に読み所と思われる箇所を引き続き挙げておく。「第二次日韓協約(乙巳条約)締結」について。日露戦争後の1905年に締結。これにより日本は外交権を接収し韓国を保護国化して、統監府を設置した。第二…
(今回は、講談社現代新書の梶村秀樹「朝鮮史」についての書評を「岩波新書の書評」ブログではあるが、例外的に載せます。念のため、梶村秀樹「朝鮮史」は岩波新書ではありません。)人にはそれぞれに寿命や天命があるのだから、私は近親の者や知人の死に対…
岩波ジュニア新書、川北稔「砂糖の世界史」(1996年)は、私の住んでいる町の古書店ではいつも在庫過剰で有名な新書である。私がよく行く古書店にて、川北「砂糖の世界史」はだいたい複数冊山積みで、ゆえに値崩れして常に安価である(笑)。というのは、近所…
1968年は明治維新の1868年からちょうど節目の百年目に当たり、この時期に明治維新ないし日本近代百年の歴史を再検討しようという機運が世論にて高まっていた。ところが、当時の自民党保守政権の佐藤内閣にて挙行された「明治百年記念式典」は、明治維新の高…
岩波新書の赤、兵藤裕己「後醍醐天皇」(2018年)にて論じられている後醍醐天皇その人の概要をまず確認しておくと、 「後醍醐天皇(1288─1339年)。在位は1318─39年。名は尊治(たかはる)。大覚寺統。即位ののち父・後宇多上皇の院政を廃止し、記録所を再興…
近年、岩波新書から「××史10講」というタイトルで古代から近現代までの各国通史を新書の一冊で、それぞれ書き抜くという非常に大胆で面白い試みのシリーズが出ている。そのイタリア版に当たるのが岩波新書の赤、北村暁夫「イタリア史10講」(2019年)である…
岩波新書の黄、安丸良夫「神々の明治維新」(1979年)の概要はこうだ。「維新政権が打ちだした神仏分離の政策と、仏教や民俗信仰などに対して全国に猛威をふるった熱狂的な排斥運動は、変革期にありがちな一時的な逸脱にすぎないように見える。が、その過程…
岩波ジュニア新書は、10代の中高生向けに書かれた岩波新書のジュヴナイル(少年少女向け読み物)である。岩波ジュニア新書の東野治之(とうの・はるゆき)「聖徳太子」(2017年)を手にして読み進めながら、私は日本古代史研究の専門家ではないが、「もし10…
今回は岩波新書の青、武田泰淳「政治家の文章」(1960年)で取り上げられている重光葵について書いてみたい。「重光葵(しげみつ・まもる)(1887─1957年)。外交官、政治家。戦前の東条・小磯内閣、戦後の東久邇(ひがしくに)・鳩山内閣の外相。1945年、横…
岩波新書の青、武田泰淳「政治家の文章」(1960年)で取り上げられている近衛文麿の概要はこうだ。「近衛文麿(1891─1945年)。五摂家筆頭、公爵。貴族院議長から首相に就任。組閣3回。後藤隆之介を中心とする学者・官僚の昭和研究会の支持を受け、東亜新秩…
岩波新書の青、武田泰淳「政治家の文章」(1960年)に関し、今回は本書で取り上げられている浜口雄幸について書いてみる。「浜口雄幸(1870─1931年)。立憲民政党総裁。大蔵省から政界に入り蔵相・内相を経て、1929年に首相。『ライオン宰相』といわれ、庶民…
岩波新書の青版に武田泰淳「政治家の文章」(1960年)がある。武田泰淳は「近代文学」同人の文学者であり、小説家が書く「政治家の文章」タイトルだから政治家の文章を文学者が分析批評する文体論の新書かと思って読むと、そうではない。文体へのこだわりな…
岩波新書の青、ハンケ「アリストテレスとアメリカ・インディアン」(1974年)を手にして、「なぜヨーロッパ人のアメリカ・インディアン征服の話でアリストテレス!?普通はスペイン人のラテンアメリカの原住民支配では、アリストテレスの古代ギリシア哲学であ…
岩波新書の赤、吉村武彦「大化改新を考える」(2018年)の表紙カバー裏解説は次のようになっている。「六四五年、蘇我入鹿暗殺。このクーデターを契機とし、激動の東アジア情勢を背景に『大化改新』が始まる。新たな中央集権国家形成を目指した改革が実行さ…
先日、岩波新書の鈴木良一「応仁の乱」(1973年)と、中公新書の呉座勇一「応仁の乱」(2016年)を続けて読んでみた。後者の呉座「応仁の乱」は近年の新書で世評人気が高く広く読まれている。本新書は増刷を重ね学術的新書としては異例のヒットであるらしい…