アメジローの岩波新書の書評(集成)

岩波新書の書評が中心の教養読書ブログです。

2021-04-01から1日間の記事一覧

このブログ全体のための最初のノート

今回から新しく始める「アメジローの岩波新書の書評」(※これまでに書き溜めてきた書評記事の厳選集成であり、以前に別の場所でやっていたブログをそのまま移動しているため全く同じ文章があります。しかし、それは赤の他人の第三者によるコピーとか盗作・剽…

真面目で堅実な人が一番えらい(自己宣伝なく継続して人知れず努力できる)

いちばんはじめの書評をめぐるコラム

私は若い頃から「図書新聞」をよく購読し、昔から書評やブックレビューの読みものを楽しんで読んでいた。私は自分で書評ブログを始める際、これまで他人の書評を日常的に読み、かつ研究した結果、自身に課したことがいくつかあった。 (1)自分の身辺雑記や個…

岩波新書の書評(521)中野敏男「ヴェーバー入門」

(今回は、ちくま新書の中野敏男「ヴェーバー入門」についての書評を「岩波新書の書評」ブログですが、例外的に載せます。念のため、中野敏男「ヴェーバー入門」は岩波新書ではありません。) 2020年は社会科学者であるマックス・ヴェーバー(1864─1920年)…

岩波新書の書評(520)今野元「マックス・ヴェーバー」

2020年は社会科学者であるマックス・ヴェーバー(1864─1920年)の没後百年の節目に当たり、ヴェーバー関連の書籍が数多く刊行された。今回の「岩波新書の書評」で取り上げる新赤版の今野元「マックス・ヴェーバー」(2020年)も、そのうちの一冊である。 「…

岩波新書の書評(519)川名壮志「記者がひもとく『少年』事件史」

岩波新書の赤、川名壮志(かわな・そうじ)「記者がひもとく『少年』事件史」(2022年)の表紙カバー裏解説文は次のようになっている。 「白昼テロ犯・山口二矢、永山則夫、サカキバラ、…。殺人犯が少年だとわかるたびに、報道と世間は、実名か匿名か、社会…

岩波新書の書評(518)「シリーズ中国近現代史」全6巻

近年の岩波新書は中国史関連の書籍が充実している。19世紀の清朝から始まる現代までの中国史概説である「シリーズ中国近現代史」全6巻(2010─17年)を、それとなく手に取り、全巻読了して弾切れになった所で、今度は、黄河文明の古代から清朝の19世紀までを…

岩波新書の書評(517)田中彰「小国主義」(その3 石橋湛山)

前々回、岩波新書の赤、田中彰「小国主義」(1999年)の書評を書いた。本新書の中で「近代日本の小国主義の系譜」として中江兆民と石橋湛山が紹介されていたので、前回と今回で中江と石橋について改めて個別に書いてみたい。 岩波文庫に「中江兆民評論集」(…

岩波新書の書評(516)田中彰「小国主義」(その2 中江兆民)

前回、岩波新書の赤、田中彰「小国主義」(1999年)の書評を書いた。本新書の中で「近代日本の小国主義の系譜」として中江兆民と石橋湛山が紹介されていたので、今回と次回で中江と石橋について、特に「小国主義」という観点にとらわれることなく自由に書い…

岩波新書の書評(515)田中彰「小国主義」(その1)

岩波新書の赤、田中彰「小国主義」(1999年)は、タイトルの「小国主義」の反対である「大国主義」を「国際関係において、大国が自国の強大な力を背景に小国を圧迫する態度」「経済力・軍事力にすぐれた国がその力を背景に小国に臨む高圧的な態度」という辞…

岩波新書の書評(514)川喜田二郎「発想法」

(今回は、中公新書の川喜田二郎「発想法」についての書評を「岩波新書の書評」ブログですが、例外的に載せます。念のため、川喜田二郎「発想法」は岩波新書ではありません。) 川喜田二郎「発想法」(1967年)は、昔からよく読まれている書籍で有名である。…

岩波新書の書評(513)ドイッチャー「ロシア革命五十年」

前回に引き続き今回も「ロシア革命」についての話である。 ヨーロッパ近代史を本質的に知るには、それぞれに各地域で起こった市民革命を中心に学ぶのが有効だ。西洋近代において、特に注目すべき革命はイギリス革命(ピューリタン革命+名誉革命)、アメリカ…

岩波新書の書評(512)クリストファー・ヒル「レーニンとロシヤ革命」

「季節と読書」の関係で言うと毎年、夏の暑い盛りの八月になると、太平洋戦争ら先の日本の戦争についての書籍をなぜか読みたくなる。これは私が紛(まぎ)れもない日本人であるからに相違ない。同様に冬の寒い季節になると、今度はロシア革命に関する書籍を…

岩波新書の書評(511)出口治明「生命保険とのつき合い方」

岩波新書の赤「生命保険とのつき合い方」(2015年)の著者である出口治明については、 「出口治明(1948年─)は日本の実業家。訪問商談の保険外交員をなくした直販のネット通販型の保険会社であるライフネット生命保険株式会社の創業者。一時は立命館アジア…

岩波新書の書評(510)東大作「ウクライナ戦争をどう終わらせるか」

岩波新書の赤、東大作「ウクライナ戦争をどう終わらせるか」(2023年)のタイトルとなっている「ウクライナ戦争」とは、2022年2月からのロシアによるウクライナ侵攻を指す。 2022年2月24日、ロシア大統領のウラジーミル・プーチンはウクライナへの「特別軍事…

岩波新書の書評(509)米原謙「徳富蘇峰」

(「岩波新書の書評」ですが、中公新書の米原謙「徳富蘇峰・日本ナショナリズムの軌跡」に関連して、今回は徳富蘇峰について書きます。念のため、米原謙「徳富蘇峰・日本ナショナリズムの軌跡」は岩波新書ではありません。) 徳富蘇峰(1863─1957年)は明治…

岩波新書の書評(508)竹内実「毛沢東」

「毛沢東(1893─1976年)は中国共産党、中華人民共和国の最高指導者。湖南省出身。反軍閥運動・農民運動を行って頭角を現し、1921年、中国共産党の設立に参加した。31年創立された中華ソヴィエト共和国臨時政府の主席になり、長征の途上の遵義会議で党内の主…

岩波新書の書評(507)古田元夫「東南アジア史10講」

東南アジアは、アジアのうち南シナ海周辺に位置する国々を指す地域区分である。インドシナ半島、マレー半島、インドネシア諸島、フィリピン諸島とその他の群島部よりなり、ほとんどの地域が年中高温の熱帯気候に属する。 地図上で見ると、東南アジアは右上の…

岩波新書の書評(506)大江健三郎「親密な手紙」

岩波新書の赤、大江健三郎「親密な手紙」(2023年)は岩波書店の月刊誌「図書」に2010年から2013年まで連載された、各人についての思い出を語る大江の文章を収録したものである。 「窮境を自分に乗り超えさせてくれる『親密な手紙』を、確かに書物にこそ見出…

岩波新書の書評(505)源了圓「徳川思想小史」

(今回の「岩波新書の書評」はタイトルとは異なり、中公新書の源了圓「徳川思想小史」について、例外的の載せます。念のため、源了圓「徳川思想小史」は岩波新書ではありません。岩波新書は日本で最初に創刊された新書で全般に優れた名作良著が多いが、後発…

岩波新書の書評(504)渡辺洋三「法とは何か 新版」

一般に「××とは何か」というタイトルの書籍は、「××とは××である」とする著者による主張の定義文を押さえれば一応は読み切れたといえる。岩波新書の赤、渡辺洋三「法とは何か・新版」(1998年)においても、「法とは××である」の著者の主張文をまず押さえる…

岩波新書の書評(503)伊東光晴「ケインズ」

近代の主流派経済学といえば古典派経済学であり、古典派経済学とは「労働価値説」(人間の労働が価値を生み、労働が商品の価値を決めるという理論)を理論的基調とする経済学の総称である。「古典派経済学以外に新古典派経済学の区分も必要ではないか」「例…

岩波新書の書評(502)池上嘉彦「記号論への招待」

岩波新書の黄、池上嘉彦「記号論への招待」(1984年)は、まずそのタイトルが私には昔から強く印象に残る。「記号論への招待」で、「招待」である。「記号論入門」とか「記号論概説」ではないのだ。記号論の初歩を初学者にも分かりやすく伝える「入門」や、…

岩波新書の書評(501)芹沢長介「日本旧石器時代」

岩波新書の黄、芹沢長介「日本旧石器時代」(1982年)に関連させて、日本の原始時代の考古学上からする時代区分論の概要を確認しておこう。 まず土器の使用別による文化的時代区分がある。縄文土器が使われた時代は「縄文文化」(約1万3000年前から前4世紀…

岩波新書の書評(500)ノーマン「忘れられた思想家 安藤昌益のこと」(その2)

カナダの有能な外交官であり、かつ優れた日本近代史の研究者であったハーバート・ノーマンの日本近代史研究の著作には、岩波文庫の「日本における近代国家の成立」(1947年、岩波文庫での再刊は1993年)、同岩波文庫の「クリオの顔・歴史随想集」(1956年、…

岩波新書の書評(499)ノーマン「忘れられた思想家 安藤昌益のこと」(その1)

カナダの有能な外交官であり、かつ優れた日本近代史の研究者であったハーバート・ノーマンが好きだ。私は昔からノーマンの日本史研究の著作を愛読している。ノーマンその人については、 「エドガートン・ハーバート・ノーマン(1909─57年)はカナダの外交官…

岩波新書の書評(498)豊下楢彦 古関彰一「集団的自衛権と安全保障」

「集団的自衛権」とは、「ある国家が武力攻撃を受けた場合、直接に攻撃を受けていない第三国が共同で防衛対処する国際法上の国家の権利」のことをいう。直接に攻撃を受けている他国を第三国が援助し、これと共同で武力攻撃にて対処する、つまりは攻撃を受け…

岩波新書の書評(497)保阪正康「昭和史のかたち」

一般に「××のかたち」といえば、そのものの実体や全体像を表す比喩として間接的に用いられる。例えば「新しい家族のかたち」とか、それこそ司馬遼太郎「この国のかたち」というように。ところが岩波新書の赤、保阪正康「昭和史のかたち」(2015年)は、昭和…

岩波新書の書評(496)四方田犬彦「『七人の侍』と現代」

映画人(俳優、監督、プロデューサー、脚本家、カメラマン、美術技師ら)に関する書籍の中で映画監督・黒澤明(1910─98年)についてのものは、他の人に比べ圧倒的に多い。ただ黒澤明の評伝や黒澤作品の映画批評など、監督デビューから晩年までの黒澤の複数作…

岩波新書の書評(495)成田龍一「歴史像を伝える『歴史叙述』と『歴史実践』」

岩波新書の「シリーズ・歴史総合を学ぶ」全三巻は、2022年4月から全国の高等学校で始まる「歴史総合」の新科目導入に合わせて、「歴史総合」授業の実践の方法とその可能性を、具体的個々の歴史素材の教材研究を通して指し示そうとするものである。今般、新た…