アメジローの岩波新書の書評(集成)

アメリカン・ショートヘアのアメジローです。岩波新書の書評が中心の教養読書ブログです。

理・医・科学

岩波新書の書評(471)メチニコフ「近代医学の建設者」

私が住んでいる街には、私が気に入った古書店が何件かある。私は定期的にそれら古書店をひやかし半分で覗(のぞ)き、時に古書を買い求めたりするのだが先日、その内の一軒(カモシカ書店!)を覗いたら店頭の特価本の棚に戦前の岩波新書の旧赤版、メチニコ…

岩波新書の書評(465)小畠郁生「恐竜はなぜ滅んだか」

恐竜は、約二億五000万年前(中世代三畳紀中期)に出現したものがその起源とされている。その後、長きに渡り陸上脊椎(せきつい)動物の頂点に立ったが、約六五00万年前(中世代白亜紀末期)の大量死滅により、鳥類(恐竜の中で唯一の現存群である鳥類…

岩波新書の書評(460)野坂昭如「科学文明に未来はあるか」

野坂昭如(1930─2015年)は、作家で歌手・作詞家であり、タレントや政治家でもあって様々な分野で活躍した多才な人であったが正直、私は昔からこの人には尊敬も感心もできず、あまり好きになれないのである。 野坂昭如といえば、今でもネット上に動画で残っ…

岩波新書の書評(441)鬼頭昭雄「異常気象と地球温暖化」

岩波新書の赤、鬼頭昭雄「異常気象と地球温暖化」(2015年)の概要は以下だ。「熱波や大雪、『経験したことがない大雨』など人々の意表をつく異常気象は、実は気象の自然な変動の現れである。しかし将来、温暖化の進行とともに極端な気象の頻度が増し、今日…

岩波新書の書評(439)ロワン=ロビンソン「核の冬」

岩波新書の黄、ロワン=ロビンソン「核の冬」(1985年)のタイトルになっている「核の冬」とは、核戦争によって地球上に大規模環境変動が起き、人為的に極度の気温低下の氷期が発生するという現象を指す。核戦争による「核の冬」現象は、核兵器の使用にとも…

岩波新書の書評(396)岡田正彦「人はなぜ太るのか」

岩波新書の赤、岡田正彦「人はなぜ太るのか・肥満を科学する」(2006年)のタイトルに引き付けて「人はなぜ太るのか」と聞かれれば、私の経験からして「それは必要以上に食べ過ぎだから」である。代謝異常などの病気の例外を除いて、健康な成人のほとんどの…

岩波新書の書評(386)遠山啓「数学入門」

私が高校生だった1980年代に当時、駿台予備学校の数学科に在籍していた秋山仁の数学の大学受験参考書が流行ったことがあった。その時の秋山仁の数学参考書といえば、例えば駿台文庫「発見的教授法による数学シリーズ」全7巻(1989─95年。森北出版から2014年…

岩波新書の書評(372)笠原嘉「不安の病理」

常々、私は思っているのだが、「健康と病気」の明確な境目はそもそもない。「健康とはこういう状態で、かたや病気とはこういった状態」というような確固とした線引きの範疇(はんちゅう)や定義はないのである。特に精神疾患に関し、人は誰でも少なからず精…

岩波新書の書評(366)鎌田雄一郎「ゲーム理論入門の入門」

近年、岩波新書から「××入門の入門」という経済数学の初学者向けのシリーズ新書が出ており、私は本シリーズを楽しみながら連続して読んでいた。例えば、坂井豊貴「ミクロ経済学入門の入門」(2017年)や田中久稔「経済数学入門の入門」(2018年)や鎌田雄一…

岩波新書の書評(329)岡田晴恵「人類VS感染症」

2019年以降、短期間で一気に世界中に蔓延した新型コロナウイルス感染症(COVID─19)の日本国内での深刻な影響をもとに、連日テレビにてよく見かけるウイルス学研究の岡田晴恵のことが、私はそれとなく気にはなっていた。あまりにメディア露出が多く、しかも…

岩波新書の書評(277)山本太郎「抗生物質と人間」

岩波新書の赤、山本太郎「抗生物質と人間」(2017年)の論旨は極めて明快だ。著者の山本太郎は医師であり、本書執筆時は長崎大学熱帯医学研究所教授である。そもそも抗生物質とは、「特に微生物によって作られる、他の細胞の発育または機能を阻害する物質の…

岩波新書の書評(272)坪田耕三「算数的思考法」

岩波新書の赤、坪田耕三「算数的思考法」(2014年)は、小学算数の良質問題演習を通して、読者の大人にも物事の考え方の基本や発想法を暗に教授するような新書だ。読み味としては丸善出版の古典の名作、ポリア「いかにして問題を解くか」(1975年)に似てい…

岩波新書の書評(266)中村禎里「血液循環の発見」

岩波新書の青、中村禎里「血液循環の発見」(1977年)は副題に「ウィリアム・ハーヴィの生涯」とある通り、ハーヴィの評伝である。この新書には教養ある感嘆すべき二人の人物がいる。一人は著者の生物学者で科学史家、厳密には生物史学者の中村禎里である。…

岩波新書の書評(240)高木仁三郎「原発事故はなぜくりかえすのか」

ある人の生涯最後の上梓や絶筆は、それがどのような内容の出来であっても無心に読まれるべきものがある。たとえ、それが著者の全盛を過ぎて、かつての自作の焼き直し再構成の凡庸なものであったり、著者が死の間際の病床にあって体調が優れず、聞き書き談話…

岩波新書の書評(228)バターフィールド「近代科学の歩み」

岩波新書の青、バターフィールド「近代科学の歩み」(1956年)は西洋自然科学史の基本概説のようなテキストで、理系の専門分野に専攻精通していない一般読者でも読めて、主にヨーロッパ自然科学の歴史を概観できる、誠に知性あふれる教養書の上品な面持ちだ…

岩波新書の書評(216)武谷三男「安全性の考え方」

2011年の東日本大震災に伴う福島第一原発の放射能漏(も)れ過酷事故を受けて一時期、私は原発関連の書籍を集中して読んだことがあった。その時に「これは戦後の日本の原発是非の議論の中で同時代人よりも頭一つ抜けている」「昔に書かれた書籍なのに2010年…

岩波新書の書評(208)長尾真「『わかる』とは何か」

岩波新書の赤、長尾真「『わかる』とは何か」(2001年)の概要はこうだ。「私たちはどんなときに『わかった!』と言うのだろうか。言葉、文章、科学的内容、気分…。いったい『何が』わかるのか。わかるには、何が必要で、どんなステップを踏むのか。IT、クロ…

岩波新書の書評(206)石河利寛「スポーツと健康」

人間の健康を保ち寿命を延ばす鍵は、いかに自身の身体を炎症させないかにある。人は身体を炎症させなければさせない分だけ、老化を防ぎ健康を保って長寿でいられる。「炎症」とは、生体の恒常性を正常に維持する防御機構の一つである。炎症は組織損傷などの…

岩波新書の書評(141)中谷宇吉郎「科学の方法」

岩波新書の青、中谷宇吉郎「科学の方法」(1958年)は、科学研究を志す理系進学の大学新入生が大学入学後「科学入門」の初学者講座にて最初に読んでレポート提出を求められるような、それほどまでに定番で有名な昔からよく知られる科学論の基本の書だ。著者…

岩波新書の書評(109)ハリス「新・ガンの知識」

先日、岩波新書の黄、ハリス「新・ガンの知識」(1977年)を読んだ。本書は「新・ガンの知識」とあることから、以前に著者による旧版「ガンの知識」もあるわけだ。確かに旧版「ガンの知識・本能と対策」も、同じく岩波新書から日本語訳版が1963年に出ている…

岩波新書の書評(93)山本義隆「近代日本一五0年」

岩波新書の赤「近代日本一五0年」(2018年)は、山本義隆の初の岩波新書である。山本義隆といえば元東大全共闘代表であり、駿台予備学校の物理科講師であり、私は文系選択で物理を本格的に勉強したことがなかったが、それでも学生時代より山本の駿台文庫「…

岩波新書の書評(78)井村裕夫「健康長寿のための医学」

岩波新書の赤、井村裕夫「健康長寿のための医学」(2016年)の表紙カバー裏解説には次のようにある。「成人期だけでなく、胎生期や子どものときの環境が、その後の高齢期の健康に影響するという。糖尿病、認知症など具体的な病気の最新知見とともに、人生の…

岩波新書の書評(73)長沼毅 井田茂「地球外生命」

岩波新書の赤、長沼毅・井田茂 「地球外生命」(2014年)の概要は以下だ。「銀河系の多くの星のまわりで惑星系が見つかっている。地球に似た惑星は、ごくふつうの存在らしい。それでは、この宇宙にはわれわれ以外にも生命が存在するだろうか?地球生命の仕組…

岩波新書の書評(38)山岡耕春「南海トラフ地震」

「南海トラフ地震」とは、海底プレート境界の南海トラフ沿いが震源域と考えられるプレート間地震のことだ。過去の記録(古文書の解読、地層堆積物の調査)から、南海トラフ地震は周期性を持ち、約90─150年の間隔で発生するといわれている。マグニチュード8か…

岩波新書の書評(35)丸山茂徳 磯崎行雄「生命と地球の歴史」

岩波新書の赤、丸山茂徳・磯崎行雄「生命と地球の歴史」(1998年)は、おそらくは高校理科の「地学」の教科内容に該当するのではないか。私は高校時代、理科の科目は化学と物理を選択していて地学を本格的に学んだことがなかったので本書の内容が大変に新鮮…

岩波新書の書評(28)武谷三男「原子力発電」

2011年、東日本大震災にて福島第一原発で放射能漏(も)れ事故が起こる。その福島原発の過酷事故を受けて以後に私は改めて読み返した原発関連の書籍が多くあり、自身の無知からそれら書籍に今更ながら新たに教えられ学ぶべき事柄も多々あった。そういった原…