アメジローの岩波新書の書評(集成)

岩波新書の書評が中心の教養読書ブログです。

岩波新書の書評(258)岩波書店編集部「岩波新書をよむ」

皆さんは普段、読書で「次はどんな本を読もうか」迷い考えるとき、何を参考にされてますか?

岩波新書に関する限り、私は岩波新書の赤、岩波書店編集部編「岩波新書をよむ」(1998年)を参照して「次はこの新書を読んでみよう」とか、「以前に読んだけれど内容を忘れてしまったので再読してみよう」の思いに駆られ、新たに書籍を手に取ったりする。「岩波新書をよむ」は、岩波新書創刊60年の記念の節目に既刊の総目録と、歴代岩波新書の特に読まれるべき定番の名著や本格な良著、時に面白い変格(エキセントリック)な奇著を各識者がテーマ別にそれぞれ推薦紹介する内容のものだ。

「テーマでよむ。総目録で探す。1938年の創刊から60年間に刊行された赤版、青版、黄版、新赤版の2000余点をどうよむか。作家、研究者、ジャーナリストらが趣向をこらして提案する29のテーマと、著者名・タイトルのダブル索引付総目録により岩波新書のガイドブックをつくりました。目録は刊行順に配列し、刊行月日、通し番号、分類番号、ジャンル名、書名、著者・訳者・編者を掲載。著訳編者名索引、書名索引付き。『新書生活』に、どうぞお役立てください」(表紙カバー裏解説)

岩波新書は1998年の時点で1938年の創刊から60年、その間に刊行された新書は2000余点ということである。本書「岩波新書をよむ」の総目録は眺めているだけでも楽しい。カタログ文化的愛好というか。読了のものは総目録にチェックの印をつけて、一つ一つつぶしていったりするわけである。

私の世代(1970年代生まれで80年代に中高生、90年代に大学生生活を主に過ごした世代)は、良くも悪くも消費文化のカタログ文化世代というか。映画でも音楽でも「歴代名作映画ベスト100」とか「必ず聞いておくべき名盤ロック・アルバム」のカタログ目録があって、それを参照し参考にしながら順番に映画鑑賞したり、レコードを順次購入したりしていくという。「歴代名作映画ベスト100」でいえば、昔はだいたい1位が「市民ケーン」(1941年)で2位は「ゴッドファーザー」(1972年)か「地獄の黙示録」(1979年)あたりに定番で決まっていて、それを1位からカウントダウンさせ、ひたすら律儀にランキング別にレンタルビデオやDVDで観ていくというのを私は学生時代からよくやっていた。

読書の岩波新書も、戦前の創刊から現在に至るまでの総目録を参照し参考にしながらカタログ縦断的に主要なものをコツコツと地道に読んでいくのが面白い。岩波新書の巻末には好評既刊の新書紹介目録がだいたいあって、古書で岩波新書を購入すると前の所有者が、既読やこれから読みたい本タイトルにチェックの印を書き入れていることがよくある。それを発見したときには、「皆も同じように目録カタログ的なものを参照し参考にして、一つずつつぶしながらコツコツと読書を重ねているのだな」の思いがして私は、なぜかうれしい気持ちになる。

「岩波新書をよむ」は、識者によるテーマ別に推薦の歴代岩波新書と牽引付きの総目録の「ブックガイド+総目録」の二部構成なのだけれど、前者の推薦岩波新書は各推薦人による新書紹介ないしはミニ書評のような読み心地であり、内容はそれなり。後者の2000点余りの既刊岩波新書の総目録はカタログ的で、眺めているだけでも楽しいに尽きる。